Vol.2「森づくりの明暗」

   内田健一著(川辺書林) \1600+税

 2001年、Woodsman Workshopの立ち上げ準備で走り回っていた筆者は、開学間もない岐阜県立森林文化アカデミーに島ア洋路さんをお訪ねした。ピカピカの1期生の皆さんを交えて歓談する場に、「ウッちゃん」と呼ばれる大男が現れた。島アさんの3倍くらいありそうな容積と、ブロードピークから滑落しても外れそうにない眼鏡バンドが印象的だった。その大男は、無口ではない筆者と切れ目無くお話を続ける島アさんを凌駕する勢いで、額に汗を浮かべながら語り続けた。内田健一さんは、よく喋り、エネルギッシュ!な熱血漢だ。島ア洋路さんとのコンビで森林・林業の教鞭を執ることになった森林文化アカデミーの行く末は明るく思えた。
 本書には、1. スウェーデン・オーストリアの林業事情
        2. スウェーデン・オーストリアの生活文化
        3. 森林・林業にまつわる蘊蓄
        4. 主に森林文化アカデミー関係者が楽しめる裏話
 などの面白さがある。

 それゆえ、林業関係者を飽きさせないと同時に、森林・林業の入門書的役割まで幅広くカバーできそうな点が興味深い。筆者は度々脱線する内田さんの蘊蓄が好きだ。言葉の選び方、表現の仕方が工夫されている。初めて林業にふれる人にも十分理解できる解説だと思う。筆者が三十数年前に買ったスウェーデン製の方位磁石はシルヴァコンパスといい、恥ずかしながらシルヴァが「銀」ではなく「森」だと知ったのも本書のおかげである。4.の裏話はけっこう根が深い。筆者にも個人が特定できるトピックがあり、内田さんの憤懣やるかたない思いと、イタチのサイゴッペで終わらせたくない思いの両方が感じられて、「そうだそうだ」とか「おいおい」などと楽しませてもらった。1.に関しては是非お読みいただきたい。筆者が知る限りスウェーデンの林業現場をこれほどリアルに記載した本はない。さすが元一人親方。現場の視点で考え比較する考察は、現場技術者として大いに参考になる。ただし、「ようだ」「だろう」「らしい」などの文末が多いことが気になった。内田さんの口癖なのか、憶測なのか?憶測ならば、レポートとしては少々問題だ。2.の暮しや文化は、森を切り口に自然観を洞察し、それぞれの国民が共有する思想や哲学にまで言及する。それは例えば教育システムや経済活動であり、森と生きることの持続性と合理性を知ることができ、このあたりに内田さんの学者的側面を垣間見ることができる。
 内田さんは知識と技術と想像力と行動力のある頑固者である。しばらくの執筆活動の後には山仕事の私塾構想があるそうだ。是非、知識と技術と想像力と行動力と上手な立ち振る舞いを身につけた後継者が輩出されることを祈る。
 筆者が請け負っている伐採現場で内田さんの教え子2人と仕事をしたことがある。2人とも明るく真面目な、内田さんの良いところをしっかり学んだ若者だったので安心した。様々な困難の中で物議を醸しながらも、確実に良い仕事をした内田さんの今後に期待したい。


(Woodsman Workshop 水野雅夫)



Vol.1 「森の健康診断」