こんにちは。Mr.さわぐるみです。
 前回は、樹木が水を吐き出す蒸散の働きについてお話しましたが、
今回は「樹木がどのように水を吸い上げるか」がテーマです。

2.樹木が水を運ぶしくみ

 樹木は光の当たる高い位置に葉を茂らせるため、高く丈夫な幹をもっています。
そのため何十mもの高さまで水を持ち上げる必要があるのですが、その仕組みについては、次のようなことが言われています。

1.
 植物の細胞は、細胞液という液体で満たされています。この細胞を包む膜は半透膜といって、水は通しても、水に溶けた他の物質は通さない性質をもっています(ただし、必要な養分だけは細胞内に取り込む仕組みが別にあります)。



 このような性質の膜で仕切られた細胞では、細胞の外側と内側で浸透圧脱線 1)が働きます。細胞液の濃度が外側よりも濃いときは水を吸収し、薄いときは逆に水がしみ出します。
 蒸散によって葉の水分が失われると、葉の細胞液の濃度は枝や幹よりも高くなります。そのため、濃度を下げようとする浸透圧が働いて枝や幹から水を引っ張りあげるのです。


2.
 葉が開く前の落葉樹を伐ると、切り口から水がしみ出ることがあります(カンバ類やカエデ類では、早春に幹を傷つけるとシロップが採れます)。このとき落葉樹は葉が無い(上から水を引っ張りあげられない)状態ですが、水は根圧とよばれる力で押し上げられています。
 根圧にも、やはり浸透圧の力が関係しています。根は土壌中の水分を吸収するために、細胞内に糖分やナトリウム(Na+)・カリウム(K+)などの物質を多く取り込みます(このとき植物はエネルギーを消費します)。こうして細胞液の濃度を高く保ち、浸透圧の力で土壌中の水分を引き寄せるのです(脱線2)。
さらに、根の付け根や幹、枝、葉へと向かうにつれて細胞液はどんどん濃くなっていきます。このように細胞液の濃さを調節することで、根の先っぽで吸収された水を上に運び上げることができるのです。


3.幹〜枝(道管)
 根から吸い上げられた水は、道管と呼ばれる管を通って幹を上ります。道管は死んだ細胞が縦長につながって空洞になった細い管で、地中の根から葉まで何十mもつながっています。
 道管の中は水で満たされて、細い水柱になっています。このような状態ではとても強い凝集力脱線3)が働くので、葉の蒸散で上の方の水を引っ張れば、糸を引くように何十mもの水柱を上に引っ張りあげることが出来るわけです。
ただ、この水柱に一度空気が入って途切れてしまうと、凝集力が働かなくなって水を上に運ぶことができなくなります。生け花は、しおれた枝の切り口を水中でもう一度切る「水切り」をすると元気に回復しますが、これも空気が入って途切れた部分をなくすことで再び凝集力が働き、水を引き上げることができるようになるからです。

 普段当たり前に思っている「樹木が水を吸い上げる」という現象も、実は浸透圧凝集力という二つの力を利用した優れたメカニズムによるモノなのです。


脱線



ご挨拶
19 「森の回廊」より(3)
18 「森の回廊」より(2)
17 「森の回廊」より(1)
16 光合成(10)
15 光合成(9)
14 光合成(8)
13 春植物
12 樹が水を運ぶしくみ
11 蒸散
10 光合成(7)
9 光合成(6)
8 光合成(5)
7 光合成(4)
6 光合成(3)
5 光合成(2)
4 光合成(1)
3 植物の身の守りかた
2 アレロパシー(2)
1 アレロパシー(1)