こんにちは。Mr.さわぐるみです。
 今回はちょっと脱線して、林床の花に目を向けてみます。
1年のうちで今の季節にだけ(ちょっと過ぎてしまいましたが)地上に姿を見せ、
ひととき春を彩るとすぐに地下に隠れてしまう「春植物」のお話です。

13.春植物

 春植物(春の妖精、スプリングエフェメラル脱線1)とも呼ばれます)は、春にだけ葉を広げて花を咲かせ、夏には地上部が朽ちて地下に隠れ、休眠する植物の総称です。(厳密には諸説ありますが・・・)
 代表的なものにカタクリ脱線2)があります。他にはアマナ、チューリップ(以上ユリ科)、フクジュソウ、セツブンソウ、キクザキイチゲ、ニリンソウ(以上キンポウゲ科)、エンゴサク類(ケシ科)など、スプリングエフェメラルにはいろんな仲間があります。
 また、ヒガンバナ、キツネノカミソリ(以上ヒガンバナ科)、ツルボ(ユリ科)などは、花は秋に咲くのですが、葉は春にしか出ません。このタイプの植物も、スプリングエフェメラルと呼ぶことがあります。

 森の中は乾燥しにくく土も肥沃なので植物には住みやすい環境なのですが、高木の樹冠が鬱閉(うっぺい)しているため、光があまり届かないのが問題です。林床の植物には普通、暗い場所でも生き残れる耐陰性(詳しくは別の機会の機会にお話します)があるのが普通です。ところがスプリングエフェメラルには、林床で生活していながら耐陰性がないのです。

 そこでスプリングエフェメラルは「春にだけ地上に出てくる」という方法を選びました。落葉樹林の地表面は夏(高木が葉を茂らせるため)も冬(雪が積もるため)も暗いのですが、雪解けを迎えた春先の一時期だけ、地表面が明るく照らされます。そこでスプリングエフェメラルは、此処ぞとばかり葉を広げ、高木が葉を茂らせる(脱線3)までの間だけ光合成を行います。短い春の間しか使わない葉ですから余分なエネルギーを消費して葉を丈夫にする必要はなく、僅かな期間で一年分のエネルギーを蓄えてしまうのです。

 スプリングエフェメラルは生き残るために他にも色々な作戦を駆使します。花を咲かせる春先はまだ寒く、虫の少ない時期です。そこで虫を引き寄せ効率よく花粉を運んでもらうために、美しい花を一面に群れて咲かせるようになったと言われています。またフクジュソウのように花をパラボラアンテナみたいにして、光を集め温度を高めることで虫を誘う種もあります。高山植物に美しい花が多いのもスプリングエフェメラルと同様に虫を引き寄せるためなんですが、それが結果として人の目を楽しませてくれるんですね。

 ところでスプリングエフェメラルは、一年中暗く鬱閉した常緑樹林や間伐不足のスギ・ヒノキ植林地では生活する事ができません。特に暖地では、落葉樹林(二次林)を放置すると常緑樹の林に移行して林内が暗くなりますから、春植物にとっては人手がよく加わった林の方が住みやすいのです。除伐や下草刈りの時期には地面の下に隠れていて、刈り取られることもありませんし・・・。

 このように、人手が加わった環境に適応してはじめて生きられる生き物は少なくありません。近ごろ生物多様性の面から里山(雑木林だけでなく、田畑や植林、水路、集落なども含む)が見直されているのは、人手の加わった環境での生態系が見直されているということだと思います。

脱線



ご挨拶
19 「森の回廊」より(3)
18 「森の回廊」より(2)
17 「森の回廊」より(1)
16 光合成(10)
15 光合成(9)
14 光合成(8)
13 春植物
12 樹が水を運ぶしくみ
11 蒸散
10 光合成(7)
9 光合成(6)
8 光合成(5)
7 光合成(4)
6 光合成(3)
5 光合成(2)
4 光合成(1)
3 植物の身の守りかた
2 アレロパシー(2)
1 アレロパシー(1)