脱線1
 「両機能とも最高」は無理ですが、「両方とも一定以上のレベルを保つ」「どこかで折り合いをつける」事は可能です。例えば照査法での施業林(択伐林)では、両機能ともかなり高いレベルを維持することはできるそうです(ただし、庇陰下で成長の抑制されている木が混ざっているために若齢段階の単純林に比べて林分生長量が最大値よりもいくらか低く抑えられる事と、大径の衰退木、枯死木、倒木のないため老齢段階の天然林に比べて生物多様性や水土保全機能がいくらか低くなります)。


脱線2
 その点に関して筆者が藤森先生に質問したところ、以下のような回答を頂けました。
筆者の質問:
 「天然林と人工林の環境機能の違いは条件や林齢によるものであって、構成樹種による差はないと考えてもよいでしょうか?
 例えば「ブナの老齢天然林とスギの若齢人工林ではブナ林の方が保水力が高い」といわれますが、同じ伐採跡地にスギとブナを植えた場合では、植栽後何十年経っても保水力は違わないのでしょうか?」
藤森先生の回答:
 「安易に樹種の違いを比較することは避けなくてはなりません。スギ林が保水機能がよいといっても、保水機能のよい土壌条件のところをスギの1等地として選び、そこにスギを植栽していることが多く、混乱が起きます。天然林と人工林を比較する場合にはまずそのことに注意を払う必要があります。
 それではスギの天然林が土壌条件のよいところにあるかというとそうではなく、更新時に他の植物との競争関係で、本来の適地から少し外れたところに成立するのが普通です。このように樹種を比較するのは因子が非常に複雑で、安易な比較は絶対に避けるべきです。
 『同じ伐採跡地にスギとブナを植えた場合では、植栽後何十年たっても保水力は違わないのでしょうか』という質問は、植栽場所がスギに適しているかブナに適しているかが問題になり、これも複雑になり、一概に応えられません。樹種による差は余り考えない方がよいと思います。
樹種が何であれ、天然林はたとえ撹乱を受けても地表面の構造が複雑であり、前生樹もいくらか残った状態からスタートすることが多く、樹種の構成、衰退木や枯死木なども含めた構造の多様性などにおいて人工林と異り、そのことにより機能も異なることを理解することが大切です。長伐期施業や非皆伐施業はその差が小さくなるということにおいて評価されます。」 

脱線3
環境という名のもとだけに林業を行うことには疑問があり、費用対効果も考えてもっと合理的な森林管理を考える必要があります。政府の「森林・林業基本計画」ではこのあたりの区分が極めてあいまいなのだそうです。


コラムへ戻る



ご挨拶
19 「森の回廊」より(3)
18 「森の回廊」より(2)
17 「森の回廊」より(1)
16 光合成(10)
15 光合成(9)
14 光合成(8)
13 春植物
12 樹が水を運ぶしくみ
11 蒸散
10 光合成(7)
9 光合成(6)
8 光合成(5)
7 光合成(4)
6 光合成(3)
5 光合成(2)
4 光合成(1)
3 植物の身の守りかた
2 アレロパシー(2)
1 アレロパシー(1)